APAの発現と一次運動野は関係あり
こんばんは。
本日は、APAが一次運動野に関与するのか?ということについてお話したいと思います。前回の内容の続きになりますので確認してない方はリンクからご確認ください。
APAはAnticipatory Postural Adjustmentの略でして予測的姿勢制御や先行随伴性姿勢調節と呼ばれたりしています。
これは主動作筋よりも姿勢制御を担う筋肉が先に筋放電をする現象のことです。
APAがわからない方は過去に記事を御覧ください。
前回、APAは補足運動野からの影響が強く、主動作筋は一次運動野の影響が大きいという高草木先生の作業仮説について紹介しました。では、一次運動野はAPAに本当に関係がないのでしょうか?
図1 今回の疑問について
今回紹介する論文は下記の論文です。
こちらは2016年にChiou SYらによって調査された研究になります。
彼らは上肢を外転位で保持する静的課題でTMSを使用した研究は存在していましたが、動的課題(APA中)の一次運動野の報告がないことに気が付き調査をしました。
これは経頭蓋磁気刺激法で得ることができる運動誘発電位(MEP)を使用して、静的立位姿勢と動的立位姿勢で一次運動野がどのようにModulationされているのかを調査した研究です。この動的課題というものがAPAにあたります。
MEPがよくわからないという方は過去の記事をご参照ください
TMSの標的筋は脊柱起立筋と腹直筋となっております。
この研究ではAPA中における脊柱起立筋の皮質脊髄路の興奮性は上肢を空中で保持する課題(SSF)と体幹伸展課題(STE)よりも高く、腹直筋では全ての課題に有意差がなかったと報告しています。
まず、脊柱起立筋と腹直筋で違いがある理由は上肢を動かす方向性についてです。
今回の課題は上肢を屈曲方向に動かすため脊柱起立筋の筋活動が高くっており、これは運動課題の特異性によるものであると推察しています。
また、彼らはSTE課題も同様に皮質脊髄路の興奮性が増加すると仮説していたそうですが、これはSSF課題と有意差がなく、仮説とは反対の結果であったとのことです。
この理由は、皮質下の影響や一次運動野は他の部位との連結があり、単純な自発運動よりも様々な脳のシステムが動員されることによってAPA中は皮質脊髄路の興奮性が増加したものと考察されています。
今日はここまで。
次回はまたTMSのパラメーター紹介に戻りたいと思います!
Reference