予測的姿勢制御と補足運動野:③
こんにちはT-memoです。
前回は補足運動野に抑制をかけるとAPAに変化が起こることをお伝えしました。今回は、その逆…すなわち補足運動野を促通すると抑制をかけたときとは反対の結果が得られるのか?あるいは変わりがないのか?(前回記事はこちら)
ということでSMAに促通をかけてAPAの変化をみた論文を紹介したいと思います。
こちらは2018年に掲載されたT Nomuraらの研究です。
今回も頭蓋直流電流陽極刺激を使った研究です。
ちなみに経頭蓋直流電流刺激(Transcranial Direct Current Stimulation:tDCS)についてDCSをサクッと説明しますと、頭に電極を貼り付けて微弱な電流を流すことで大脳皮質を促通したり、抑制したりすることができる装置になります。陰極刺激は大脳皮質は抑制し、陽極刺激は促通状態にすることを可能にします。
彼らは高齢者を対象に補足運動野(SMA)へ経頭蓋直流電流陽極刺激を行い、前・直後・15分後に上肢を挙上する課題を行い、APAを測定しました。この研究のアウトカムは筋電図から得たAPA時間三角筋・大腿二頭筋の筋活動開始の差)と変動係数、上肢の平均・最大加速度、重心動揺となっています。
結果は…陽極のtDCS後のAPA時間は拡張し(図参照)、変動係数は減少、COPの軌跡長・COP前後方向の平均速度が減少した結果となりました。
これらの結果から補足運動野はAPAに関与し、tDCSの有効性について述べています(T Nomura, 2018)。
陰極のtDCSとは反対の結果となりましたね。
非常に面白い結果であったと思います。
次回は上肢挙上課題以外の課題でSMAの関与が検討されているかについてお伝えしたいと思います。
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