APAには一次運動野は関与する:2 - 2
こんにちは。
最近は予測的姿勢制御:APAに関する論文を紹介しています。
APAには補足運動野が重要であるという高草木先生の作業仮説が有名ですが、一次運動野はAPAの発現に関与しないのでしょうか?という疑問から一次運動野とAPAの関係について論じている紙面を紹介しています。
APAがわからない方は以下のリンクからアクセスしてみてください。
前回のAPAの記事では肩屈曲が生じる30-40ms(0.03-0.04秒)前に一次運動野の興奮性が増加することをお伝えし、一次運動野とAPAには関わりがあることが示唆されています。しかし、これですと脊髄のα運動細胞の興奮性が増加して運動誘発電位が高くなったのか?脳の一次運動野の興奮性が増加して高くなったのか?の判別がつきません。
今日はAPAに伴って起こる一次運動野の興奮性増加の由来について考えてみたいと思います。
ということで今回も同じくChiou SYらによる2018年の報告を紹介します。
結論から言いますとSICIは肩屈曲が生じる1-49ms前の時間において減少し、CMEPは変化を認めなかったとのことです(図1,2)
図1 SICI 結果
図2 CMEP結果
ちなみにSICIとCMEPに関しては以前記事で紹介しています。経頭蓋磁気刺激(TMS)のパラメーターの理解があるととても役に立ちますので、記事の一番下にリンクを貼り付けてあります。よければ過去の記事を御覧ください。
彼女らによればこれは皮質内回路(SICI)の変化が起きているけれども、脊髄レベル(CMEP)の変化は起きていないことからこのAPAは脊髄レベルで調節されているものではなく、大脳皮質レベルで調節されるという従来のフィードフォワード制御モデルを支持する結果であった(Chiou SY et al. 2018)と考察しています。
APAでは広島大の笠井先生がH-reflexを使ったヒラメ筋抑制の研究もありますが、今回の報告ではAPAが大脳レベルで調節されているという点を明らかにしたということで非常に新規性があるかと思います。これは中枢神経理学療法の障害像や改善メカニズムを考える上で重要な知見かと思います。また、中枢神経障害後の体幹リハビリテーションにも重要な情報をもたらすかと思います。
ということで今日はここまで!
お時間いただきありがとうございました。
次回は、補足運動野との関連についてお伝えしたいと思います。
Reference