セラピストは必読!経頭蓋磁気刺激の知識:運動誘発電位
こんばんは。
今日は経頭蓋磁気刺激法のパラメーターの一つである運動誘発電位(Motor Evoked Potential:MEP)について サクッと説明します。
MEPとは一体何なんでしょうか?
これは経頭蓋磁気刺激で一次運動野を刺激した後、ターゲットとなる筋肉から筋電図を記録したものになります(図1)。これは、刺激された一次運動野が皮質脊髄路を通り、脊髄のα運動細胞まで到達し、最終的にターゲットとなる筋肉から筋電図が得られると考えられています。
図1 運動誘発電位
MEP振幅は一般的に一次運動野の興奮性に関する状態を示し、臨床では脳卒中後の残存する皮質脊髄路の状態を調べるために使用されたりします。
近年は、脳神経外科の手術中にMEPを記録することもできるようです。
TMSは一次運動野の状態を調べることができる手法として近年報告がとても増えており、セラピストも知っておかねばならない知識かと思います。
次回は、また予測的姿勢制御と経頭蓋磁気刺激法を使った記事に戻ってみたいと思います。
①前半:2018年度認定理学療法士試験の予想問題作ってみました「循環領域;必須研修編」
どうも。
田舎のPT、イナピーです。
前回に引き続き、今回は必須研修編の練習問題になります。
資料見ながら作ってるのですが、不適切な箇所などありましたらご指摘をお願いします!
ではどうぞ。
「認定理学療法試験:必須研修問題〜循環〜」
1. 心臓の構造と機能
・左右の心房室は何によって固定されているか
→右房: 左房: 右室: 左室:
・心タンポナーデとは、何によって心臓の動きが阻害されるか
→
・収縮が阻害された状態では、心電図ではどのような変化が生じるか
→
・X-p上の陰影は左右で6つ見られる、それぞれ何を見ているか
→右: 左:
・心筋は何で構成されるか、それぞれ役割を答えよ
→
・心房と心室は何によって隔たれているか
→
・右冠動脈の分枝を2つ答えよ、心臓の何に関与するか答えよ
→
2. 心臓の生理:
・自律神経により調整される心臓の機能を4つ答えよ
→
・副交感神経と交感神経の働きはどちらが強力か
→
・交感神経の神経伝達物質は心臓のどこに結合するか
→
・圧受容器、伸展受容器はそれぞれどこに存在するか
→
・上記の興奮はどこへ伝導するか
→
・血圧は何によって調節されるか、3つ答えよ。また、数時間から日単位で調節に関わるものはどれか
→
・心拍出量が減少するのは、心拍数がいくつ以上になった時か
→
・一回拍出量の増大は、安静時の何倍まで増大するか
→
・左室のポンプ機能を規定する因子を4つ答えよ
→
3.バイタルサインとその臨床的意義
・脈はどこに触れることが出来るか、4つ答えよ
→
・橈骨A、総頸Aそれぞれの最低触知可能な血圧を答えよ
→
・脈拍と運動強度はどのような関係を認めるか
→
・交互脈をきたす疾患は何か
→
・以下の穴埋めをせよ:速脈では、脈は⬜︎となり、大動脈弁逆流症や僧帽弁逆流、甲状腺機能亢進症などで⬜︎を認める。
→
・ポワズイユの法則における血圧に関する、各所見との相関について述べよ
「血管の長さ」「血液の粘性」「血管の半径」「心拍出量」
→
・高血圧のボーダーはいくつ以上か
→
4. 心電図の基礎
・心電図の誘導のうち、双極誘導に該当する誘導を3つ答えよ
→
・あらかじめ定めた基準(不関電極)と測定する電極装着点(関電極)の電位差を求める誘導法をなんというか
→
・2点間の電位差を求める誘導法をなんというか
→
・Einthovenの法則で成り立つ式と、それが適応される誘導名を答えよ
→
・goldberger法により求められる値を説明し、増幅(augmented)された振幅は通常の何倍かを答えよ
→
・Wilsonの結合電極である中心点で電位が0となるような誘導をなんというか
→
・伝導路の流れを7つ示せ
→
・虚血性ST変化の検出に適した誘導を2つ答えよ
→
・PQ時間で正常とされる範囲を答えよ
→
・正常波形でP波が陰性となるのはどの誘導か
→
・異常Q波の特徴を2つ答えよ
→
・T波が陰転化する誘導を答えよ
→
・アダムストークス発作の機序について穴埋めを完成させよ:⬜︎による脳血流減少によって⬜︎を引き起こす
→
・ST変化の種類において、虚血性変化と判断されるものを重症順に2つ答えよ
→
5. 虚血性心疾患(IHD)の病態、診断、治療の流れ
・冠危険因子が3-4個該当する場合、IHDの発症リスクは高くなる。その冠危険因子4つを答えよ
→
・IHDの病態概念として、冠動脈硬化進展度と発症頻度は一致するか
→
・AMIのイベント発生は何が評価指標となっているか
→
・以下の穴埋めを答えよ
「IHDは、冠動脈の⬜︎によって、⬜︎を引き起こす疾患群の総称である」
→
・心筋虚血のメカニズムとして、何のバランスが崩れた状態を指すか。また、その時のdouble productのcut offを答えよ
→
・ACSは発症時には有意狭窄を認めないことがあるが、その理由を答えよ
→
・冠血流量が減少するのは、狭窄度がいくつ以上の時か
→
・心筋虚血カスケードにおける最初の変化は何か。また、心電図変化や胸痛が出現するのはそれぞれ何秒後か
→
・一過性心筋虚血による血管新生をなんと呼ぶか
→
・uAPにカテゴライズされる条件3つを答えよ
→
・β-blocker, Ca-blockerが適用となる狭心症の分類を答えよ
→β: CCB:
・対象者が運動実施できない場合の心筋評価として何があげられるか、2つ答えよ
→
・AMI発症時の心電図変化のフローを4つ答えよ
→
・負荷心電図におけるST測定ポイントを答えよ
→
「答え」
【1. の答え合せ】
・左室は上行大動脈、右室は肺動脈幹、左房は肺静脈、右房は上下大静脈により固定されている
・心タンポとは、心膜液の貯留によって心臓の動きが阻害される
・心タンポでは収縮が阻害される結果、心電図上ではR波が減弱する
・X-p上では、右側では上から上大静脈、右心房。左側では上から大動脈弓、肺動脈幹、左心房、左心室。
・心筋は、ポンプ作用に関する固有心筋と、伝導系の特殊心筋によって構成される。
・心房と心室は線維輪によって隔たれている。
・右冠動脈は、洞結節動脈と房室結節動脈の2つの分岐がある。リズム生成に関与する。
【2. の答え合せ】
・自律神経によって、心拍数、心筋収縮力、房室伝導速度、心筋興奮の閾値の調整が行われる。
・交感神経よりも副交感神経の働きが優位である。
・交感神経の神経伝達物質は、心筋細胞のβ1受容体に結合する。
・圧受容体は頸動脈洞および大動脈弓、伸展受容器は心房壁にある。
・上記の興奮は延髄の血管運動中枢へ伝導する。
・神経性調節、反射性調節、体液性調節がある。日単位で調節するのは体液性調節。
・HR150bpmを超えると、stroke volumeが減少するため、心拍出量は減少する
・運動時の一回拍出量の増大は安静時の約1.3倍まで増大する
・ポンプ機能は、心筋特性(収縮・拡張性)、心拍数、前負荷、後負荷によって規定される
【3. の答え合せ】
・脈拍は橈骨動脈, 総頸動脈, 足背動脈 大腿動脈で触れることが出来る
・橈骨動脈、総頸動脈はそれぞれ80, 60mmHgである
・脈拍と運動強度は直線的な比例関係にある
・交互脈は重症心不全などが原因で見られる
・脈の遅速について、速脈は大脈であり、AR・MR、甲状腺機能亢進症などで反跳脈を認める
・ポワズイユの法則における血圧は、心拍出量、血液の粘性、血管の長さに比例し、血管の半径4乗に反比例する。
・高血圧のボーダーは135/85mmHg以上
【4. の答え合せ】
・双極誘導は標準肢誘導であるⅠ, Ⅱ, Ⅲが該当する
・不関電極と関電極の電位差を求めたものを胸部誘導という
・2点間の電位差を求める誘導法を双極誘導という
・Einthovenの法則で成り立つ式は、「Ⅱ誘導=Ⅰ誘導+Ⅲ誘導」
・Goldberger法は、1箇所の電位から残る2つの電位の平均を差し引いた値を用いる(augmented=1.5倍)
・胸部誘導はWilsonの結合電極である中心点を不関電極とし、電位はほぼ0となる。
・伝導路の流れは7つ「洞結節、右房、左房、房室結節、His束、Purkinje線維、左室」
・虚血性ST変化の検出に適した誘導は、CM5, CC5である
・心電図波形の正常値(1マス0/04sec, 0.1mVである)について、P波幅は2.5マス以内:0.06-0.1sec、PQ時間は5マス以内:0.12-0.2sec、QRS時間は2.5マス以内:0.06-0.1sec、QT時間は10マス以内:0.35-0.44sec
・正常波形でPQ時間が正常とされるのは0.12-0.2sec(3-5マス)である
・正常波形でP波が陰性となるのはaVRである
・異常Q波はaVR以外の誘導の幅≧1mm、かつQ波の深さがR波の1/4以上
・T波が陰転化する誘導はaVRである
・アダムストークス発作の機序:徐脈、頻脈性の不整脈による脳血流減少によって意識障害を引き起こす
・ST変化のうち、虚血性変化と判断されるのは重症な順に下降傾斜型、水平型である
【5. の答え合せ】
・IHDの発症リスクである冠危険因子4つ:肥満、高血圧、高血糖、高コレステロール血症
・冠動脈硬化進展度と発症頻度は必ずしも一致しない
・AMIのイベント発生の評価指標は内膜中膜肥厚
・IHDは、冠動脈の粥状硬化や攣縮による狭窄や閉塞によって、心筋虚血を引き起こす疾患群の総称である
・心筋虚血のメカニズムとして、酸素需要と酸素供給のバランスが崩れた状態を指す。その時のDPは≧15,000となると言われている
・ACSは、冠動脈内の急性血栓症による狭窄・閉塞が原因で心筋虚血を発症するため、発症時には有意狭窄を認めないことがある
・冠血流量が減少するのは、狭窄度≧75%の時
・心筋虚血カスケードにおける最初の変化は収縮能障害 / 心電図変化は20sec, 胸痛が出現するのは30sec後である
・一過性心筋虚血による血管新生を心筋虚血耐性現象という
・uAPにカテゴライズされるのは、①新規に労作性の胸痛発作が出現、②発作頻度や強さや時間が増悪、③安静時発作を認める の3つである
・β blocker を使用するのは労作性狭心症、CCBを使用するのは安静(冠攣縮性)狭心症
・対象者が運動実施できない場合の心筋評価として冠動脈CT、負荷心筋シンチグラフィーがある
・AMI発症時の心電図変化は「T波増高→ST上昇→異常Q波→冠性T波」
・負荷心電図におけるST測定ポイントは、j点(QRS終点)あるいはJ点+80msec
今日はここまで。
自分の周りには、認定試験を受験された方がいないので、どんな傾向なのかよくわからないんですよ。(こんな無駄な手間。。。時間もったいない泣)
ただ、選択問題らしいから、こんな感じで選択肢が列挙されていてその正誤を選択させられるのかな〜なんて想像しながら作っています。
的外れだったら土下座ですね。
次回はこの続きをまとめていきます。
ではでは。
2018年度認定理学療法士試験の予想問題作ってみました「みんな共通指定研修編」
どうも。
田舎のPT、イナピーです。
来たる2019年3月2日、認定理学療法士の試験があります。
自分は今年、循環領域で受験する予定でして、研修会資料の赤字で示された部分を中心に、自主学習を進めていました。
ただ読むだけではあまりに退屈な内容で、息つく間もなく別世界へ誘われてしまうので、自分で問題を作って学習を進めていたんですよ。
このブログを読んでくださっている方の中にも、もしかしたら認定試験を受験する方もいるかもしれないと思い、参考程度に載せてみます。
めちゃ長いんで、これ読んでもなんの特にもならない人は読まないことをお勧めします。
取り組まれる方は、最初の問題を解いてから下の赤字のところで答え合せしていただければと思います。
必要な方々へのお役に立てれば幸いです。
続きを読む
セラピストが知っておきたい経頭蓋磁気刺激(TMS)の知識!
こんばんは。
本日は経頭蓋磁気刺激法で何がわかるの?
というタイトルで理学療法士が知っておきたいパラメーターについてお伝えしたいと思います。みなさんTMSについてはご存知でしょうか?TMSと言いますと治療用の反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)のイメージが強いのではないでしょうか?
TMSはrTMS以外にも様々な使い方ができます。今後はTMSのパラメーターについても紹介していきたいと思いますが、まずはTMSの原理についてです。
Q:経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)とは一体なんなんでしょうか?
A:磁力を使って脳を非侵襲的に刺激することが可能な装置です!
TMSの原理はFaradayの磁気誘導の法則に基づくもので、コイル内に瞬間的に電流を流し、磁場を発生させ、生体に過電流を生じさせます。(菅原,2017)
これの原理を利用して脳を非侵襲的に刺激することが可能となります。
今後は定期的にアップしていきたいと思います。次回はパラメーターについて紹介していきたいと思います。
Reference
菅原憲一:経頭蓋磁気刺激を利用した中枢神経機能の評価.理学療法学: 44(1);pp72-78.
Anticipatory Postural Adjustment:APAの作業仮説〜APAには運動野と補足運動野が関与する〜
こんばんは。
本日はAPAの生成に運動野と補足運動野が関与するという作業仮説の紹介です。
APAはAnticipatory postural Adjustmentの略で、日本では”予測的姿勢制御”や”先行随伴性姿勢調節”などと呼ばれています。
これは随意運動よりも”先に”姿勢を制御する筋肉が筋放電を開始する現象であり、ヒトの姿勢制御の一つであります。
例えば、みなさんが立っている状態で力いっぱい腕を前に上に上げたとき、腕を上げる筋肉が動く前に太ももの後ろの筋肉は既に動いています。
さて、このAPAのメカニズムについてですが実はよくわかっていません・・・
日本では高草木先生のAPA作業仮説が有名かと思います。
これ動物実は験で一次運動野の下肢の領域にGABA Agonistを注入すると、反対側の下肢に麻痺が出現し、両側補足運動野の体幹・下肢領域にMuscimol(脳の働き抑制する)を投与すると麻痺は出現せず、姿勢制御が妨げられたという結果から運動野と補足運動野がAPAと関連すると考えられています(K Takakusaki, 2017)
近年では非侵襲的な神経学的検査が増え、APAのメカニズムも少しずつ解明されてきていますが、まだ十分ではありません。
次回からは、APAの神経学的なメカニズムに関与する検査についてもいろいろと紹介していきたいと思います。
また、次回もよろしくおねがいします。
Reference
Anticipatory Postural adjustment:なぜフィードフォワード制御なのか?
こんばんは。
以前に予測的姿勢制御:Anticipatory Postural adjustment(APA)に関する記事を紹介しました。
今回はAPAはなぜフィードフォワード制御と考えられているのか?についてお伝えします。
まず、APAとは主動作筋より早く姿勢制御筋に先行した筋活動が起こることです。
通常、ヒトがなにかの合図(音や聴覚)を感知して反応する(フィードバック)には0.1秒以上かかると考えられています。
* 固有感覚由来は0.1s秒より早く反応することができると言われています。
陸上競技で0.1秒より早くスタートするとフライング判定になるのはこのためです。
主動作筋よりも姿勢制御筋の筋活動が先に起こるAPAは、フィードバックによるものとするにはあまりに早すぎるということになります。したがってAPAは神経系によって事前にプログラムされた現象であり、フィードフォワード制御であると考えられています。(CHiou SY, 2016)
ということで今日はここまで。
また、よろしくおねがいします。
Reference
心肺運動負荷試験から考える運動処方の概念②
どうも。
田舎のPT、イナピーです。
前回はAT pointに関するお話を生理学的な面から解析するときの考え方について
お話しました。
今回はAT pointの向こう側、RC pointについてのお話です。
とってもきつい運動強度なので、原則的に長く続くような運動様式での処方においては用いることのないdomain(領域)となります。
AT pointを超えると、エネルギー産生は有気的代謝だけでは間に合わず、徐々に無気的代謝である解糖系に依存する割合が増えてきます。
解糖系では、ピルビン酸がアセチルCoAに代謝される前に、乳酸へ代謝されます。
この代謝回路が多くの割合を占めると、乳酸産生スピードは上がり、pHが減少して酸性に傾いていきます。
この時に、アシドーシスをバッファ(緩衝)するのが重炭酸イオンですが、このバッファスピードを上回る速度でドシドシと乳酸を生じる状態が、AT pointを超えた強度となります。
このまま運動強度が上昇していくとどんどん乳酸産生スピードは右肩上がりとなり、
しかも乳酸をバッファする過程で多くのCO2が産まれるので、PaCO2も上昇します。
そうすると、運動誘発性の代謝性アシドーシスを長い時間バッファすることができなくなります。
がんばり過ぎてもう頑張れない、俺にもっと力があれば…
…では、どうやってこのpHの負の傾きを食い止めるか。
それは、化学受容器反射によって呼吸中枢が興奮し、換気が促進されることで呼吸性アルカローシスを進行させます。
延髄や頸動脈小体がpHの減少やCO2濃度の上昇を感知し、VE(分時換気量), VCO2(二酸化炭素排出量)が増加し、結果としてpHを正の傾きへ修正する動きが出てきます。
このときの運動強度が、今日の主役であるRC pointとなります。
この時、VCO2に対してVEがより大きく上昇するために、VE/VCO2は上昇に転じます。
なんとも雑な図でごめんなさい。。。
ちなみに、この漸増負荷(Inc Ex)におけるRC pointは、定常負荷運動(SS)で処方する際にはInc Exにおける70-80%peak VO2 / 80-90%peak HRに相当する運動強度となります。
これは、有酸素運動として処方できる強度の上限とされていて、"CP:critical power"と言います。
CPの詳細はこちら。
この概念はおそらくスポーツ界のトレーニングにおいてよく知られていると思いますが、心リハでお目にかかったことは、僕は今までないですね。
このフェーズではVO2 slow componentの影響により、VO2が推定よりも大きく上昇します。
「参考文献」
Maximal lactate steady state, respiratory compensation threshold and critical power. - PubMed - NCBI
今日はここまで。
次回は、peak VO2についてのお話です。
ではでは。