心肺運動負荷試験から考える運動処方の概念②
どうも。
田舎のPT、イナピーです。
前回はAT pointに関するお話を生理学的な面から解析するときの考え方について
お話しました。
今回はAT pointの向こう側、RC pointについてのお話です。
とってもきつい運動強度なので、原則的に長く続くような運動様式での処方においては用いることのないdomain(領域)となります。
AT pointを超えると、エネルギー産生は有気的代謝だけでは間に合わず、徐々に無気的代謝である解糖系に依存する割合が増えてきます。
解糖系では、ピルビン酸がアセチルCoAに代謝される前に、乳酸へ代謝されます。
この代謝回路が多くの割合を占めると、乳酸産生スピードは上がり、pHが減少して酸性に傾いていきます。
この時に、アシドーシスをバッファ(緩衝)するのが重炭酸イオンですが、このバッファスピードを上回る速度でドシドシと乳酸を生じる状態が、AT pointを超えた強度となります。
このまま運動強度が上昇していくとどんどん乳酸産生スピードは右肩上がりとなり、
しかも乳酸をバッファする過程で多くのCO2が産まれるので、PaCO2も上昇します。
そうすると、運動誘発性の代謝性アシドーシスを長い時間バッファすることができなくなります。
がんばり過ぎてもう頑張れない、俺にもっと力があれば…
…では、どうやってこのpHの負の傾きを食い止めるか。
それは、化学受容器反射によって呼吸中枢が興奮し、換気が促進されることで呼吸性アルカローシスを進行させます。
延髄や頸動脈小体がpHの減少やCO2濃度の上昇を感知し、VE(分時換気量), VCO2(二酸化炭素排出量)が増加し、結果としてpHを正の傾きへ修正する動きが出てきます。
このときの運動強度が、今日の主役であるRC pointとなります。
この時、VCO2に対してVEがより大きく上昇するために、VE/VCO2は上昇に転じます。
なんとも雑な図でごめんなさい。。。
ちなみに、この漸増負荷(Inc Ex)におけるRC pointは、定常負荷運動(SS)で処方する際にはInc Exにおける70-80%peak VO2 / 80-90%peak HRに相当する運動強度となります。
これは、有酸素運動として処方できる強度の上限とされていて、"CP:critical power"と言います。
CPの詳細はこちら。
この概念はおそらくスポーツ界のトレーニングにおいてよく知られていると思いますが、心リハでお目にかかったことは、僕は今までないですね。
このフェーズではVO2 slow componentの影響により、VO2が推定よりも大きく上昇します。
「参考文献」
Maximal lactate steady state, respiratory compensation threshold and critical power. - PubMed - NCBI
今日はここまで。
次回は、peak VO2についてのお話です。
ではでは。