田舎の理学療法士

田舎の急性期大学病院勤務PT&大学院生PTのメモ用ブログ(2人で運営してます)

脳卒中患者の体幹機能回復のメカニズム

こんばんは。

田舎の大学病院で理学療法士をしておりますT-memoです。

 

今回は脳卒中患者さんの体幹機能のメカニズムついて考えてみたいと思います。

 

脳卒中後患者さんの体幹機能は皆さんご存知の通り、とても重要な身体機能ですよね。

実際に臨床をしていると運動麻痺により「座れない」「座れるけれども動的な課題になるとバランスを崩す」といった患者さんがたくさんいます。体幹機能は両側大脳半球支配であることが知られていますが、その回復過程に関する報告に関する論文の一つになります。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

Fujiwaraらは経皮的頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS )*という装置を使ってMotor Evoked Potential(MEP)**を健常者と回復期脳卒中患者さんの体幹筋から記録しました。また、臨床的な評価としてTrunk Control Test(TCT)***とMEPの関連を検討しています。(下に簡単な説明があります)

 

結果、脳卒中患者では同側の大脳半球から脊柱起立筋と外腹斜筋に出現するMEPが多く、MEPの潜時も反対側のMEPと比較して2ms程度長いことを報告しています。また、同側外腹斜筋のMEP ratio(MEP/脊髄根刺激によって得られたMEPの振幅)とTCTとの間に相関関係があり(r=0.82),さらに経時的観察において損傷側半球のMEPには相関はなく、非損傷半球とTCTの間に相関関係があることから脳卒中片麻痺患者における体幹機能の回復に同側皮質脊髄路が関与していることを示しています(Fujiwara T, 2001)

 

最近は神経生理学的検査と臨床的評価尺度を組み合わせた研究は多くなってきましたが、エビデンスは十分ではありません。ここからは私見ですが、特に神経疾患の場合は責任巣が神経系ですので、運動学的変化だけでなく、神経がどう変化するかを捉えることは重要かと思います。そういった意味で、このような基礎研究と臨床研究を組み合わせた研究は貴重な報告になるかと思います。

 

*TMS:大脳の神経細胞を刺激する装置です。

**MEP:TMSによって刺激された運動野(M1)の神経細胞から皮質脊髄路を通って標的とする筋肉から得られた筋電図波形になります。これは、皮質脊髄路の興奮性の指標として使用されます。詳細は成書に譲ります。

***TCT:体幹機能を麻痺側への寝返り、非麻痺側への寝返り、起き上がり、座位の保持の4項目で評価する

 

 

 Fujiwara T, et al.: The relationships between trunk function and the findings of transcranial magnetic stimulation among patients with stroke. J rehabil Med.2001 Nov;33(6):249-55.