田舎の理学療法士

田舎の急性期大学病院勤務PT&大学院生PTのメモ用ブログ(2人で運営してます)

脳卒中患者の体幹機能回復のメカニズム②

こんばんは。

田舎の大学病院で理学療法士をしておりますT-memoです。

 

 

前回は脳卒中患者さんの体幹機能のメカニズムついて臨床神経生理学的観点から考えてみました。今回は、体幹筋の形態学的変化に関する報告を紹介します。

 

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 
 Tsujiらは入院中の片麻痺患者83名を対象の体幹筋の筋横断面積と機能・能力レベルに関連があるかを調査しました。また、得られた筋横断面積の左右差から3つのグループに分類し、分析を行いました(グループⅠ:反対側>同側、グループⅡ:反対側:同側、グループⅢ:反対側<同側)。結果は、大腿の筋断面積と比較して体幹筋では損傷半球と反対側の筋断面積がより大きく、退院時の筋断面積は入院時よりも増加していました。また、SIASとFIM、歩行速度はグループⅠにおいて低かったと報告しています。
 
 
損傷半球と反対側の筋断面積が大きかったことについて、非損傷半球からの非交差性線維による影響の可能性を述べており、非損傷半球が代償的に筋断面積に関わっていることを主張しています(Tsuji T, 2003)。
 
 
SIASやFIM、歩行速度でグループⅠが重症例であったことについては上記の代償経路の活性化の程度によるものである考察を述べています。また、別の可能性としてはリハビリテーションの内容による体幹の筋活動パターンやその程度は筋断面積の程度に影響する可能性があり、四肢の重症度等も考慮する必要があることが示唆されたとしています(Tsuji T, 2003)。
 
 
私は急性期で働いていますので、この論文の病期とは少し違いますが、廃用による筋萎縮を予防する観点は体幹筋においても重要であるという非常に重要な論文と思いました。体幹筋の形態学的な変化に注目した論文でしたが、臨床では筋断面積の左右差というものも考慮して日々のリハビリテーション内容や患者さんの運動戦略を適切に評価し、課題難易度を含めた運動課題の設定をすることがとても重要であると改めて感じました。