最高酸素摂取量(peak VO2)の臨床的意義と運動処方における有用性
どうも。
田舎のPT、イナピーです。
今日は、CPXで得られる数値の代表格とも言える、最高酸素摂取量(peak VO2)についてのお話です。
数値の意味づけや、運動処方における有用性を紹介していきます。
これは、運動耐容能を示す評価であり、かつ予後と関連する指標でもあります。
アメリカ・カナダ・フランスで実施されたHF-ACTIONという過去最大規模の多施設共同
のランダム化比較試験では、収縮機能障害を有する心不全患者(HFrEF)における
peak VO2の改善率が、心臓リハビリのend pointである死亡率や再入院率等とどれだけ
関連するかを調査した研究があります。
結論からいうと、
最適な薬物療法やデバイス療法を受けた左室機能の低下した慢性心不全において、3ヶ月にわたるpeak VO2のわずかな増加が、あらゆる原因の死亡率および入院率の低下と関連していました。
Swankらによると、左室駆出率(LVEF)<35%の慢性心不全患者における心臓リハビリの介入から3ヶ月後のpeak VO2が6%改善すると、
・全死亡率や全入院率のリスクが5%低減
・心血管由来の死亡率や再入院率のリスクが4%低減
・心血管死亡率や心不全入院のリスクが8%低減
することが分かりました。
また、予測因子調整後における全死亡率のリスクは7%低減することが示されています。
こういったアウトカムの変化率を参考に出来ると、患者さんに提供できる情報やモチベーション引き出すための指導内容もバリエーションが広がりますよね。
次に、運動処方に用いることについてのお話です。
結論からいうと、
peakVO2単独(例えば、%peakVO2のような相対強度)では、運動処方への使用は推奨されていません。
そもそも、peakVO2とは
大筋群を含む動的運動時における予測最大努力の運動試験中に到達する、平均2-30秒以上の酸素摂取量の値。
と定義されています。
一般的には、最大酸素摂取量(maxVO2)とは異なる値であることが言われています。
そして、最大/亜最大努力への到達(信頼性の高いpeakVO2値)を導き出すための、いくつかのクライテリアで仮定されています。
・仕事率が上昇しているのに酸素脈(VO2 / HR)が上昇しない
・最大呼気ガス比(VCO2/VO2) ≧ 1.10
・運動後、血中乳酸濃度≧8mmol/L
・RPE≧18 / 8(borg scale/修正ボルグ)
・患者が疲れ切っている
上記のうち、
漸増負荷運動時のVO2/WRのプラトーこそが
最大負荷決定のゴールドスタンダードとされている一方で、呼気ガス比の最大値のカットオフや運動後lac濃
度の提案は個人間でバラツキが大きく、使用上の制限があるとも言われています。
単純に考えて、VO2がそれ以上上昇しなくなれば、酸素を利用する上での機能的な上限に達したことが分かりますもんね。
特に、運動処方においてはこのpeak VO2の相対強度である%peakVO2を単独で使用
する事は適切ではないとの指摘もあります。
これは、"gross"と"net"という概念から考察されている理論です。
要は、正確に運動処方を行いたいなら、運動時の値だけじゃなくて安静時の値も考慮した方が良いですよって事みたいです。
かの有名なkarvonen法も、方程式の最後に安静時のVO2:3.5ml/min/kgを加算していますよね。
今日はここまで。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。
ではでは。