脳卒中患者の体幹機能障害の原因①:筋力低下
こんばんは。
前回は座位IPSについてご紹介しました。
今回は体幹機能の低下の原因について少し文献を紹介したいと思います。
A:その原因の一つは筋力低下です。
上記に記載してある、いずれの論文でも脳卒中後は体幹筋力が低下することが報告されています。この原因のひとつにTanakaらは運動単位のリクルートメントが減少することを述べています。(Tanaka S, 1997 and 1998)
運動単位は一つの運動ニューロンとそのニューロンに支配される筋繊維群のことです。
筋収縮力の増加には運動単位の動員(すなわちリクルートメント)と発射頻度が重要であることは周知の事実です。
特に運動単位の動員では、小さい運動単位から大きい運動単位が順次動員されます。これを「サイズの原理(size principle)」といいます。
別の報告にはなりますが、脳卒中患者ではこの大きい運動単位の動員が選択的に減少することが報告されており、筋力低下の原因の一つとして考えられています。(Lukács M, 2008)
もし、脳卒中患者さんの筋力低下に対してアプローチするのであれば高強度な体幹トレーニングが必要になるのかもしれません。しかし、臨床に従事する我々は機能だけみていてはいけません。機能障害を改善してもそれが、活動・参加につながらなければ意味がありませんし、なにより患者さんのQOLの改善につながるアプローチをすることが重要かと思います。筋力低下も重要な一つの要素ですが、これにとらわれず多方面からアプローチを考える必要があると思います。
次回は、Acticipatory Postural Adjustmentについて説明したいと思います。
引用文献
- Bohannon RW.: Lateral trunk flexion strength: impairment, measurement reliability and implications following unilateral brain lesion. Int J Rehabil. 1992; 15: 249–251.
- Tanaka S, Hachisuka K, et al.: Muscle strength of the trunk flexion-extension in post-stroke hemiplegic patients. Am J Phys Med Rehabil. 1998; 77: 288–290.
- Tanaka S, Hachisuka K, et al.: Trunk rotatory muscle performance in post-stroke hemiplegic patients. Am J Phys Med Rehabil. 1997; 76: 366–369.
- Lukács M et al: Large motor units are selectively affected following a stroke.Clin Neurpphysiol.2008 Nov;119(11):2555-8.