田舎の理学療法士

田舎の急性期大学病院勤務PT&大学院生PTのメモ用ブログ(2人で運営してます)

karvonen法(heart rate reserve)での運動処方の利点と欠点

どうも。

田舎のPT、イナピーです。

 

今日は、皆さんおなじみのkarvonen法についてのお話です。

聞きなじみのある話だと思いますので、理解しやすいかと思います。

臨床ですと、とりわけ急性期においては、年齢から算出する予測最大心拍数「220-age」から安静時心拍数(rest HR)を引き、その数に処方したい運動強度を掛けて、最後にrest HRを加えて目標心拍数(THR:Target Heart Rate)を算出する、といった方法がよく用いられているかと思います。

 

 THR=(220 - age - rest HR)×k + rest HR

 

文献では、CPXから算出したpeakHRから求める予備心拍数(HRR:heart rate reserve)の頭に%をつけた相対強度で表記されることが多いですね。

ちなみに、自分の学校の授業では英語表記を一度も目にしたことがなかった用語だったので、初めは「HRR?ナニソレオイシイノ?」状態でした。方程式は以下の通り、

 

%HRR=(peak HR - rest HR)×k + rest HR

 

もちろん、もっと精度の高い運動処方のためには、実際に心肺運動負荷試験(CPX)を実施して、AT(無気的代謝閾値) point HRを用いる方法がgold standardですから、CPXを実施出来る環境があるのならば、AT HRを使用すべきです。

ですが、入院患者さんに対して運動処方を行う場合、DPC(診断群分類包括評価)によってCPXを実施しても検査料金を請求出来ないため、実施しない施設が多いかと思います。

事実、イタリアを例にとってみると、運動処方に用いられる手法のうちCPX(CPET)が占める割合はなんと10%にも満たないとの報告もあります。この状況をどう打開していくか、代替法はないのか、といった課題の一つとなっているとも言えます。

 

Characteristics of structured physical training currently provided in cardiac patients: insights from the Exercise Training in Cardiac Rehabilitation... - PubMed - NCBIwww.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

ですので、多くの場合は目安として予測式を用いたTHRを設定し、その都度バイタルを確認して運動療法を進めていきます。

そこで考慮すべき点は、karvonen法あるいはHRRによる運動処方が、どれくらい正確に予測できうるのかです。

 

これに関してはいくつか報告がありますが、ひとつ印象に残っている報告を紹介します。

 

2012年の日本循環器学会の研究班によるガイドラインでは、心血管疾患患者においては、中等強度以下:k=0.4~0.6以下の処方を勧めています。

また、疾病あるいは入院期の治療期間遷延に伴う活動量低下によるdeconditioningの強い患者に対しては、比較的低い強度から始める事を推奨しているようですが、具体的な表記はありません。

http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_nohara_h.pdf

 

多くの研究では、「方程式から得られる心拍数」と、その心拍設定で「運動したときの心拍数」を比較した時のそれぞれの予測値と実測値との誤差を調査しています。

 

江端ら(2017)は、PCIを施行した急性心筋梗塞(AMI)患者の運動療法導入時のkarvonen法の最適な定数について検討、報告しています。結果は以下の通り。

 

 

P:AMI患者57例(60.7±13.1歳)において

I:発症から16±6日経過した時点で実施した自転車エルゴメーターを用いてCPXからAT-HRを得た

C:karvonen法において、上記AT-HRと一致する定数kを求めたところ

O:k=0.21±0.07(0.21,0.17-0.25)であった

日本心臓リハビリテーション学会www.shinzouriha.jp

 

海外の報告が多い中、こうしたアジア人における報告は貴重な情報源となるかと思います。

にしても、予想のななめ上を行くほどめちゃくちゃ低強度ですね…

詳しく見ていきますと、57例のうち、①k<0.2群(n=25)と②k≧0.2群(n=32)に分けてその因子を検討しているようです。

左室駆出率(LVEF)は両群において有意差を認めませんが、β blocker使用状況はそれぞれ①:②=72%:38%となっています。

どうやら、このstudyで対象とされているような患者群においては、心拍上昇がmaskingされているので、β blocker使用例において運動強度は低く処方されるべきなのかも知れません。

 

何にしても、入院中の心筋梗塞患者さんへの運動処方は心拍数だけ見ていればいい!と言った具合に、一側面だけで判断すべきではないのではないかなとも思います。

血圧と合わせて二重積(double product : DP)をモニタリングする、息切れや疲労感の程度を評価する、といった生理的応答を多面的に評価した上で運動強度を設定するのがbetterかと思います。

そして、これらの評価は何を見るために取ったのか、このパラメーター達が何の生理的応答を反映しているのかを分かっていないと、その負荷で継続すべきなのか、負荷を増減する必要があるのかが判断できません。

それだとせっかくの評価をとる行為自体が無意味となってしまう恐れもあります。。

 

あとは、心筋の収縮力や心拍数の上昇を抑制する陰性変力/変時作用を有するβ blockerの使用状況は、運動処方においてとても重要なポイントとなるので、要チェックですね。

 

というわけで、タイトルで言っていたkarvonen法の利点と欠点についてまとめますと、

 

利点 : CPXが実施できない環境であっても、簡便に運動処方が可能

 

欠点 : とりわけ冠動脈疾患患者のβ blocker使用例では、予測値と実測値に誤差が生じるので、karvonen法適応時には自覚的 / 他覚的所見と合わせたモニタリングが必要

 

β blockerが及ぼす影響については、さまざまな報告がありますので、またの機会に紹介しようと思います。

今日はここまで。

いつも読んで頂いてありがとうございます。

次回もぜひ読んでくださいね!

ではでは~。