田舎の理学療法士

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高強度インターバルトレーニングの安全性③「心機能の低下した心不全患者にHIIT適応しても平気?」

どうも。

田舎のPT、イナピーです。

今日は心不全患者に高強度インターバルトレーニング(HIIT)って適応可能なの?

についての文献をご紹介します。

 

 

一般的には、心不全患者は多疾患の並存するようなハイリスク患者が多いです。

よって、運動処方ではリスク回避の目的で、カルボーネン法の「k=0.2~0.4」程度の比較的軽負荷から開始することが多いかと思います。

では、そんな心不全患者にHIITは適応可能なのでしょうか。

結論から言うと、左室駆出率の低下した(LVEF≦40%)心不全(HFrEF)症例に関しては、従来のMCTの運動処方が推奨される とのことでした。

詳細を見ていきましょう。

 

 

2017年に報告された、多施設ランダマイズドコントロールトライアル(RCT)である

SMATEX-HF trialでは、

 

 

P:LVEF≦35%かつNYHA2-3で、症状の安定した、適正な薬物療法を受けた慢性心不全(CHF)患者261名において

I:HIIT(強度:90-95%HRpeak)群は

C:MCT(強度:60-70%HRpeak)群およびRRE(推奨されている一般的な運動)群と比べて

O:12週間後のpeak VO2や左室拡張末期径(LVEDD)の改善においてHIIT・MCT>RREの関係を示したが、HIIT, MCTで有意差はなかった。

さらに、52週間後には両群ともに長期効果を認めなかった。

 

https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/circulationaha.116.022924

 

 

との報告があります。

長期効果に関しては、非監視下における患者さんが、指導された内容の水準をいかに「遵守」できるかどうかといった点も考慮する必要があるので、今回のような運動介入だけでは困難な面があるようです。

 

 

また、HIIT群に割り付けられたCHF患者における「90-95%HRpeak」の負荷は実施困難な運動強度となり、結果として処方された負荷よりも低強度で運動を実施していたようです。

MCT群では処方されていたよりも高い負荷(>70%HRpeak)でのdomainでの運動強度なっていたことが、予測よりもMCT群で 高い効果を認めた要因とされています。

HIIT群とMCT群で効果の差が出なかった要因のとして考えられます。

 

 

この研究を臨床応用する際に検討すべきfeasiblityに関して、対象となる運動耐容能についてみて見ます。

対象のVO2 peakはどの群も平均で16~18ml/kg/min程度であり、低体力だからこそ実施困難な強度であったとすると、適応となる範囲も限られてくるのではないですかねぇ。

今回は身体機能についての評価がありませんでしたので、どういった理由でVO2 peakが低かったかによっても結果が変わってくるのかもしれません。

 

 

しかし、介入から1年後にも運動耐容能や心機能が低下することなく保たれていること、介入中の心血管イベントや左室リモデリングの増悪がなかった事から、安全性の面はクリアできるのかなとも思います。

 

 

今日はここまで。

次回は、神経体液性因子に関してHIITが及ぼす影響について書こうと思います。

ではでは。