高強度インターバルトレーニングの安全性②「設定した運動強度、ちゃんと合ってる?」
どうも。
田舎のPT、イナピーです。
今日は以前書かせて頂いた「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」の安全性の続きです。
高強度インターバルトレーニングの安全性① - 田舎の理学療法士 https://t.co/dUyq65OTs8
— 田舎の理学療法士 (@nirbanana1) 2018年11月3日
一般的に、運動の強さ(運動強度)は低ければ低いほど安全で、運動に対する受け入れも良好とされています。
ですが、運動の効果には「強度依存性」という性質があり、より高い負荷をかけた方
が「運動耐容能」の改善が大きいとも言われています。
しかし、無機的代謝(AT point)を超えた運動を長時間実施するのは、心疾患患者にとっては虚血性変化や心停止などの危険が伴います。
そこで、強い負荷と低い負荷を組み合わせて実施する「インターバル形式」の運動が
考案されたのです。
安全性を担保するといっても、あらゆる事象にはメリットとデメリットがあります。
今日は、HIITを心疾患患者に適応する時に考慮すべき点についてのご紹介をしていき
ます。
「注意点①運動強度」
HIITプロトコルでは、心拍数が「85-95%HRpeak」に到達することを定めていますが、Conraads らがSAINTEX-CAD studyで検証した報告によると、
P:200名の冠動脈疾患患者の運動耐用能(peakVO2)の改善度は
I:高強度インターバルトレーニング(AIT:90-95%HRpeak)群も
C:中等強度の持久性運動(ACT:70-75%HRpeak)群も
O:VO2peakの改善が同等(5.06±4.06ml/kg/min vs. 4.35±3.21ml/kg/min, p-time<0.001)であった。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25464446
と、どちらの介入も効果に大きな差はなかったとされています。
その原因のひとつとして、実際の運動時の心拍数が挙げられます。
その結果を抜粋しますと、以下のとおり。
なんということでしょう、高強度群は目標の運動強度に達していなかったのです。
このことは、高強度群での運動時に処方した負荷をこなせないために、安全性を考慮
して負荷を減量したことに起因している、と筆者は述べています。
いやいや、十分高い負荷かけてるでしょ、と思いません?
実際、この研究の高強度群の効果は、Pattynらの報告しているmeta analysisの結果と
比べてもより高い効果を示していることから、十分な負荷であったと推察されます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24549476
また、中等強度群の運動強度は過去に報告されている強度と比べて比較的高かった
ため、高強度群の結果をmaskingした可能性があります。
このことは、運動の特性である「強度依存性」を反映した結果だと思います。
しかし、注目して欲しいのはどちらの介入においても、VO2 peakは3.5ml/kg/min以上の
改善を示している事。
VO2 peakが3.5ml/kg/min改善する毎に、生存率が12%改善する。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11893790
との報告があるように、どちらの介入も意味のある変化をもたらしている。
視点を変えれば、冠動脈疾患患者においては、運動負荷のかけ方を工夫すれば許容される活動レベルが拡大する可能性がある、とも言えるのではないでしょうか。
HIITの適応可能性を広げる重要な知見となるのではないでしょうか。
なんにせよ、正しい運動処方となるように、borg scaleなどの主観的評価だけではなくて、運動時の心拍数のモニタリングを怠らない事が大切だと思います。
今日はここまで。
次回は違った視点でHIITのlimitationを紹介しようと思います。
ありがとうございました。