田舎の理学療法士

田舎の急性期大学病院勤務PT&大学院生PTのメモ用ブログ(2人で運営してます)

第1弾:talk testの有用性について「talk testとその生理学的背景」

どうも。

田舎のPT、イナピーです。

前回の最後に酸素摂取量と心拍数に関連する記事を書くと謳っておきながら、

今日のお題は堂々とtalk testです。

すみません、気になる記事をたまたま見つけてしまったのです。

 

と言う訳で、まずはtalk testに関連する生理学の知識の整理から入っていこうかと思います。

運動中に会話すると、息が切れるメカニズムについてのおさらいです。

 
 
運動時のエネルギー生成のための代謝過程において、好気的代謝活動がメインで働いているとき、呼吸中枢による呼気と吸気の切り替えや、肺伸展受容器の興奮による吸気の抑制(Hering-Breuer反射)が呼吸を調節してます。
簡単に言うと、ガス交換を目的として呼吸が調節されます。
 
そして、活動する器官でのエネルギー生成の過程で必要なO2を取り込み、電子伝達系で酸化し、クエン酸回路や解糖系などを利用してATPを作ります。
この時に副産物として生じるCO2を体外へ排出し、動脈血中のpHを平衡に調整してます。
 
ところが、徐々に活動レベル・運動強度が高くなると、とりわけ解糖系でエネルギー産生する割合が増え、乳酸が代謝されるスピードが速くなります。
すると、乳酸の代謝(緩衝)が増加して副産物としてのCO2も多くなります
末梢の頸動脈体や大動脈体、中枢の延髄にある化学受容器がpHの酸性への傾きを感知して換気を促進します。
 
いわゆるこれがVE/VO2の傾きが急峻になる点、VO2よりVCO2が大きくなる点、AT(anerobic threshold) pointです。
この状態で運動してる時に、患者にtalk testを実施すると、”初めて”その時の強度で運動し続けることに不安を覚えると言われてます。
 
 
そりゃそうですよね、ただでさえ体内では呼吸数増やしてpHを平衡にして、O2をたくさん取り込もうとしてるのに、会話して呼吸数減らしてたら、ちょっと苦しいかなって感じるはずです。
この、呼吸数が増加していくタイミングと、僕らが相手に要求する呼吸数を減らして会話させるタイミングが重なって生じる、呼吸調節の要求とのミスマッチこそが、このtalk testの概念の生理学的背景とされています。
 
この話は、2017年にNoortje Creemersらがintroductionにて丁寧に解説していますので、是非ご参照下さい。
孫引きもたくさん出来ます。
 
ちなみに、この評価は1939年、登山家が快適に話せるペースより早いペースで登りながら会話出来ない事に気付いたのがこの概念の生まれたきっかけだそうです。
うーん、登山は偉大です。
 
 
次回は、このtalk testを心臓リハビリで使ってみたよって言う報告を紹介しようと思います。
 
今年も1年間ありがとうございました。
来年もぜひ、記事が更新された時にはちらっとのぞいて頂けたら幸いです。
皆さん、良いお年を!
 
ではでは。