田舎の理学療法士

田舎の急性期大学病院勤務PT&大学院生PTのメモ用ブログ(2人で運営してます)

高強度インターバルトレーニング(HIIT)が血管に良い影響を与えるか?

どうも。

田舎のPT、イナピーです。

 

今日は少し前に書いてた記事について、少し付け加えるような内容となってます。

それは、タイトルの通り、なんで高強度インターバルトレーニングは血管の内皮機能に良い影響を与えてくれるのか。

その根拠となりうる報告について、見つけたものを紹介したいと思います。

 

 

その前に皆さん、血流再分配という用語を聞いたことがありますか。

運動時には、酸素需要の高い所へより多く血流を送るために主に活動骨格筋への血流量が増加し、代わりに臓器血流や非活動筋への血流量が抑えられるけど、脳血流は一定に保たれるといった、交感神経性調節や局所性調節により生じる反応で、増加した心拍出量を適切に配分する働きです。

この働きは、Remensnyder らが”functional symatholysis”と定義づけています。

https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/01.res.11.3.370

 

この、運動時に活動骨格筋だけが血流量を増加させている要因のひとつに一酸化窒素(NO)産生があります。

NOは、血管内皮より産生される物質で、強い血管拡張作用を持ちます。運動時に心拍出量が増加し、ずり応力(SS:ndothelial shear stress)によってNO産生が促されるわけですが、この産生スピードが交感神経性血管収縮作用を上回り、活動筋への血流量が確保されます。

そして、NOにはもう一つ効用があり、ESSによるNO産生は、血管機能を保ち、冠動脈疾患予防に貢献することが言われています。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

なんで、こう、僕がしつこい程に高強度を推奨するかというと、1つの解として『従来の心血管疾患予防における運動由来の有益な効果の40〜60%は、心血管疾患のリスクファクターの改善と関連がない』というエビデンスが報告された経緯もあるのかなと個人的に考察しています。

それは、従来の有酸素運動においては安全性の観点から運動強度を比較的抑えた運動処方となっていたため、運動時の血流速度の増加が、もしかしたら血管内皮からのNOの産生を十分に引き出すに満たない強度であった可能性が示唆されています。

ということは、運動強度依存性にNOは増加するということでしょうか?

その仮説に対して一定の見解を示したstudyがあります。 

 

 

Danielらは、健常若年者の有酸素運動時の血流パターンの差に着目し、「漸増負荷運動」と「定負荷(steady-state)運動」の2群に分けたときの上腕動脈における血流パターンを、高解像度エコーと超音波を用いて検証しました。

結果は以下の通り。

 

P:平均24歳の学生6名に対して

I:自転車エルゴメーターを用いて漸増負荷試験(IAE)を8-12分実施したときと

C:上記運動中に得た乳酸濃度より運動強度を決定し①0-2mmol/L②2-4mmol/L③4-6mmol/Lの3条件でぞれぞれ5分、5分、最低3分で定常運動(SSE)を実施、比較したところ

O: SSEでは安静時と比べて強度依存性に両方向性の血流量が有意に増加した。

またSSEの最大負荷より得られる血流速度は、IAEの最大負荷よりも有意に高い値を示した

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

まず、対象が若年であり同様に高齢者に適応できる仮説とは言えませんが、ひとつの見解として捉える分にはいいかなとも思います。

また運動強度を乳酸濃度で決定している点では、心拍数や酸素摂取量で運動処方する際とはまた違った結果になるかもしれません。

そして、ずり応力の評価を血流速度から推測している点で、NOが強度依存性に増加したかどうかは断言できず、今後の検討課題としている点も大きなlimitationとなります。

しかし、こういった検証はまだ件数が少なく、今後の発展に繋がる研究でもあるかと思います。

 

 

今日はここまで。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

また次回もお会いしましょう。

ではでは。