田舎の理学療法士

田舎の急性期大学病院勤務PT&大学院生PTのメモ用ブログ(2人で運営してます)

心臓リハビリテーション指導士試験の予想問題⑥:「大血管疾患、心臓外科術後の管理」編

どうも。

田舎のPT、イナピーです。

 今回は心リハ指導士の予想問題第6弾です。

 

本日の内容は血管疾患、心臓外科術後の管理について。

答えは、一番下に書いてありますのでご参照ください。

 
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1.次の内容のうち、誤りであるものを2つ選べ:

a.大血管疾患術後の患者に対するリハビリテーションはclass1で推奨される

b.下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)は生活習慣病が原因とされており、Fontaine分類Ⅲ度はリハビリ適応となる。

c.急性大動脈解離の患者には、レジスタンストレーニングは禁忌とされる。

d.非破裂腹部大動脈瘤の手術適応となるサイズには男女差がある。

e .ASOを有する患者への禁煙は強く推奨される

 

2.大血管疾患術後のリハビリ実施許可の基準について、中止基準として誤ったものを2つ選べ:

a.運動前の収縮期血圧が100mmHg以下または160mmHg以上

b.新規の頻脈性心房細動の出現

c.心室性期外収縮の出現

d.離床時の収縮時血圧が20mmHg以上低下する場合

e .CRPの急性増悪期 

 

3.次の内容のうち、正しいものを2つ選べ:

a.大動脈解離術後の急性期管理にある患者の収縮期血圧は安静時130mmHg未満で管理することが推奨される

b.胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤ともに50mm以上では手術適応となる。

c.弁置換術において、機械弁を選択した場合は一生涯ワーファリンを服薬する

d.弁置換術後患者において、機械弁を用いた症例はワーファリンとDOACでは効果に差がなく、ビタミンKの制限がないDOACは第一選択となる。

e.StanfordA偽腔開存型とStanfordB型は標準リハビリコースに従ってリハビリを進める

 

4.次の内容のうち、正しいものを2つ選べ:

a.急性期の大動脈解離保存例では、収縮期血圧は105-120mmHgでの管理が推奨される

b.偽腔閉塞型でULPを有する例では破裂リスクが低く、短期リハビリコースに組み込まれる

c.胸部大動脈瘤を有する患者では、有酸素運動の処方、術後症例における収縮期血圧130mmHg未満での管理はclass Ⅰで推奨される

d.腹部大動脈瘤を有する患者に対する禁煙、スタチンの投与はclass Ⅰで推奨される

e.大動脈解離術後では、標準コースおよび短期コースともに1日の血圧が130mmHg未満で管理されていることが退院の基準とされている

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[血管疾患、心臓外科術後の管理]のポイント

大血管疾患リハビリ進行の中止基準

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●大動脈瘤に関連するエビデンス

・TAA:60mm以上、AAA:50mm以上はope適応の基準となる

・最大短径ごとの破裂リスク

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・TAAにおける内科治療で立証されているエビデンスclassⅠでの推奨は確認されていない

・AAAのope適応の性差について、男性>55mm女性>50mmへの手術適応はclass Ⅰ 

で推奨される

・TAAのサイズが40-45mmの患者に比べ、55mm以上での非破裂生存率(予後)は非常に悪い(N Engl J Med 2003; 348: 1895-1901)

 

●大動脈解離に関連するエビデンス

・保存例の急性期の降圧管理では、105-120mmHgの管理が原則。

一方、慢性期においては安静時<130mmHg、運動時<150mmHgで管理。

・偽腔閉塞型のうち潰瘍様突出像( ULP) を呈する例では、真腔から偽腔への再開通が多く出現し,大動脈径が 40mm 以上の例では,線溶凝固系の異常が遷延したり、破裂リスクが高まったりする。そのため、これらの病態を標準リハビリコースとし、その他の合併症を起こす可能性の低い病態を短期リハビリコースとしている。

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●弁膜症に関するエビデンス

・機械弁を用いた例に対する抗凝固療法はワーファリンが第一選択となる。

ダビガトランなどのDOAC使用例では出血リスクが高く、ワーファリンの代替にはならないことが報告されており(Eikelboom JW et al.N Engl J Med 2013;369:1206-14)、現段階ではDOACの優位性は確立されていない。

・抗凝固療法について、ワーファリン投与は機械弁の場合は一生涯続くが、生体弁の場合は心房細動を合併しなければ血栓リスクの高い3ヶ月間のみである。

 

●末梢閉塞性動脈疾患(PAD)に関するエビデンス

・ASOは動脈硬化などが原因とされており、生活習慣が影響するとされている。

・Fontaine分類のⅡ度以下では心リハ適応となる。Ⅲ度以上はope適応。

・ABIは0.9以下で狭窄や閉塞1.4以上で動脈の高度石灰化を示す。

 

参考資料:

・弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012 年改訂版)

・大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011改訂版)

・末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン(2015 年改訂版)

・心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)

 

 

[答え]

a,b/ c,d/ a,c/ a,e

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今日はここまで。

 

 

本シリーズは、11弾まで用意してあります。

3日に1回くらいの頻度で更新できるように頑張っております。

今後もよろしくお願いいたします。

ではでは!

 

心臓リハビリテーション指導士の予想問題⑤:循環器疾患の病態と治療・二次予防編

どうも。

田舎のPT、イナピーです。

 

今回は心リハ指導士の予想問題第5弾です。

本日の内容は循環器疾患の病態と二次予防について。

答えは、一番下に書いてありますのでご参照ください。

 

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1.急性冠症候群の治療選択として誤ったものを2つ選べ:

a.予後、身体活動度の評価目的に急性期より心肺運動負荷試験を実施する

b.体重管理はclassⅠで推奨される

c.左室機能の保たれた心筋梗塞患者に対するβ遮断薬はclass Ⅰ で推奨される

d.冠攣縮を基礎病態とする患者に対するβ遮断薬はclass Ⅰ で推奨される

e.糖尿病を合併する心筋梗塞患者において、HbA1c<7%の管理はclass Ⅰで推奨される

 

2.慢性心不全二次予防の治療選択において、class Ⅰで推奨されるものとして誤ったものを2つ選べ:

a.禁煙および節酒

b.うっ血による自覚症状を呈するHFpEF患者に対する利尿薬の投与

c.頻脈性心房細動を有するHFrEF患者に対するβ遮断薬の投与

d.症状のあるHFrEF患者に対するβ遮断薬の投与

e.高血圧に対する降圧管理

 

3.次の説明のうち、正しい内容を2つ選べ:

a.心筋梗塞発症時の心電図変化のうち、一番初めに出現する変化はST上昇である

b.心筋梗塞発症時の心電図変化のうち、ST上昇は貫壁性の虚血を示す。

c.心筋逸脱酵素の出現順序は、CK→トロポニンT→AST→LDHである

d.心筋梗塞発症後、異常Q波は慢性期へ移行する頃には消失する

e.心筋梗塞発症後、陰性T派は残存する場合がある

 

4.次の説明のうち、誤ったものを2つ選べ:

a.禁煙は5Rを参考に動機付けを行う

b.急性冠症候群および心不全の二次予防において、血糖管理はどちらもclass Ⅰで推奨される

c.急性冠症候群および心不全の二次予防において、禁煙はどちらもclass Ⅰで推奨される

d.急性冠症候群および心不全の二次予防において、節酒はどちらもclass Ⅰで推奨される

e.ブリンクマン指数は、1週間の喫煙本数と喫煙年数の積で表される

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[循環器疾患の病態と治療・二次予防]のポイント

●急性冠症候群の病態、治療・二次予防

⇨急性心筋梗塞(AMI)発症時の、心筋逸脱酵素の出現順序:

 トロポニンT→CK→AST→LDH

⇨AMI発症時の心電図変化:

    ①T波増高→ST上昇・・・6時間以内に変化。

 ③異常Q波・・・2日目 

    ④T波陰転化・・・2週間目

 その後、陰性T波は上向きに戻る場合もあるが、異常Q波は残存する

ACS患者に対するβ遮断薬の投与:

 心不全徴候を呈し、LVEF≦40%に該当する症例に対してはclass Ⅰ

 ただし、心不全徴候がなく、左室機能の保たれた症例に対してはclass Ⅱ 

⇨冠攣縮を病態とする患者に対しては、Ca拮抗薬の投与がclass Ⅰ とされる

⇨急性期からのCPXの実施はclass Ⅰ で推奨される

⇨二次予防の観点から運動療法、禁煙、体重管理はclass Ⅰ とされている

 摂酒に関しては明記されていない

(以上、ACSガイドライン2018年を参照)

 

心不全の病態、治療・二次予防:

⇨HFrEFに対するβ遮断薬の投与:

 有症状の症例の予後改善に対してclass Ⅰ

 頻脈性心房細動や無症状の症例に対してclass Ⅱ

⇨うっ血による自覚症状を呈するHFpEF患者に対する利尿薬の投与:class Ⅰ

 *現在薬物治療でclass Ⅰ とされているのは利尿薬のみ

⇨HFrEFに対する運動療法:class Ⅰ

 運動ベースの心臓リハビリが運動耐容能、再入院率、死亡率、QOLを改善

 ARB, ACE-I, β遮断薬+運動療法は薬剤のみの介入より有意にpeakVO2

 を改善(以上、慢性・急性心不全ガイドライン2018年を参照)

 ⇨慢性心不全禁煙/運動/食事療法/体重管理はclass Ⅰ節酒はclass Ⅱとされる。

 

●禁煙指導:

⇨ブリンクマン指数:1日の喫煙本数と喫煙年数の積

 400以上で肺がんの発症リスク上昇

 600以上で肺がんの発症ハイリスク

 1,200以上で喉頭がんの発症ハイリスク

⇨禁煙はスタチンより予後を良好にする

⇨禁煙の5A・5R:禁煙指導の手順や原則

 ●5A「Ask, Advice, Assess, Assist, Arrange」の指導手順。

 Assessの時点で禁煙の意思がない場合、5Rを参考に動機付けを行う。

 ●5R「Relevance(患者特性との関連情報を提供して励ます)、Risk(健康への影響について説明)、Rewards(効果についての患者の考えを聞いて、最も関連する情報を提供)、Roadblocks(禁煙の妨げとなる要因を訪ね、その対策について助言)、Repetition(来院ごとに禁煙の動機付け)

 

[答え]

1. c,d  2. a,c  3. b,e  4. d,e

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今日はここまで。

なお、過去2年間の出題された内容から各シリーズごとにヤマを張って問題を作成しているので、内容が網羅できていない事があります。何卒ご容赦ください。

 

また見ていただけたら幸いです。

ではでは!

心臓リハビリテーション指導士の予想問題④:心肺運動負荷試験(CPX)編

 どうも。

田舎のPT、イナピーです。

 

試験が近づくと焦りますよね、でも基本を押さえておけばきっと大丈夫。。。

な、はず。。。

 

本日の内容は、「心肺運動負荷試験(CPX)について。

答えは、一番下に書いてありますのでご参照ください。

 

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1.AT pointを算出する上で正しい組み合わせを2つ選べ:

a.ガス交換比(R) - 酸素摂取量(VO2)

b.仕事率(WR) - 二酸化炭素排出量(VCO2)

c.終末呼気酸素分圧(ETO2) -終末呼気二酸化炭素分圧(ETCO2)

d.分時換気量(VE) - VCO2

e.VO2 - VCO2

 

2.AT pointを算出する上で誤った組み合わせを2つ選べ:

a.ETO2 - VE/VO2

b.VE/VCO2 - VE/VO2

c.VE/VCO2 - ETO2

d.V-slope法 - VE/VO2

e .ETCO2 - R

 

3.RC pointを算出する上で正しい組み合わせを2つ選べ:

a.VE/VCO2 - VE/VO2

b.VE/VCO2 - R

c.VE/VO2 - R

d.VCO2 - ETCO2

e.ETO2 - ETCO2

 

4.重症心不全例で特徴的な異常値を示す指標として正しいものを2つ選べ:

a.VE/VCO2 slope

b.ΔVO2/ΔWR

c.V-slope

d.ΔVO2/ΔHR

e .ETCO2

 

5.心筋梗塞発症後PCIを施行した60歳男性。身長166cm, 体重は60kg。自転車エルゴメーターにてCPX(protocol:10-10Watt)を施行したところ、AT-HRは102bpm、AT point METsは5.2METs,  AT1分前の強度は5METsであった。この結果から運動処方し、処方した負荷での有酸素運動を30分行った時のエネルギー消費量および、その時の負荷と同等の活動内容の組み合わせで正しいものを2つ選べ。(O2:1Lあたり、4.85kcalとする):

a.153kcal

b.159kcal

c.レクリエーションレベルの水泳(平泳ぎ)

d.平地での速歩(5.6km/h)

e .平地での速歩(6.4km/h)

 

6.心筋梗塞発症後にPCIを施行した70歳男性。身長154cm, 体重は70kg。

自転車エルゴメーターにてCPX(protocol:0-10Watt)を施行したところ、AT point -1min loadは40Watt(3.2METs), AT-HRは110bpm, AT-METsは3.5METsであった。この結果から運動処方し、処方した負荷での有酸素運動を45分間行った時のエネルギー消費量およびその時の負荷と同等の活動内容の組み合わせで正しいものを2つ選べ。(O2:1Lあたり、4.85kcalとする):

a.171kcal

b.187kcal

c.平地での速歩(5.6km/h)

d.乗馬

e .掃除機での掃除

 

7.心不全患者に対して心肺運動負荷試験(CPX)を実施し、次のデータを得た。

正しい説明のものを2つ選べ:

a.AよりCが重症で、BよりDが重症である

b.AよりCが重症で、DよりBが重症である

c.グラフA・Cより、AT pointが算出できる

d.グラフB・Dより、AT pontが算出できる

e .グラフA・Cにおいて、傾きが小さいほど重症とされている

pastedGraphic.png

 

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[心肺運動負荷試験(CPX)のポイント]

●AT決定のcriteria:

 V-slope法=VO2に対するVCO2の上昇点

 ガス交換比(R)の運動強度に対する上昇点

 ETCO2は変わらずETO2が上昇

 VE/VCO2は変わらずにVE/VO2が上昇

 

●RC pointのcriteria:

 VE/VCO2は上昇に転じ、VE/VO2が更に上昇する

 ETCO2は下降し、ETO2は急峻に上昇する

 VE/VCO2 slopeの傾きが急峻に上昇する

 

⇨このクライテリアについては、VE, VCO2, VO2がどの点でどう変化するかが理解できていると解きやすくなる(下図参照)。

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●重症心不全における特徴的な指標

 ①VE / VCO2 slopeの傾きは急峻(>34)となる

 ②ΔVO2/WRは正常値の10-11ml/min/Wattよりも低値となる

*ΔVO2/WRの意義:

⇨1W増加するのにVO2がどれだけ増加するかをランプ負荷で評価し、末梢筋への酸素輸出能を表す。

 中等度強度以上の負荷で変化し、負荷開始から約1分後〜AT付近までのVO2変化を1次回帰して求める。

 心機能不全例や虚血患者ではポンプ機能が低下し、中等度以下の強度でもVO2増加が少なくなる。

 

●CPXのグラフからAT pointを読み取り、運動処方を行う

⇨目標心拍数は、AT pointでの心拍数を選択

⇨運動強度(自転車エルゴメーターのWatt数、METs)はAT pointの1分前を選択

⇨METsから、運動時のエネルギー消費量を回答

”O2 1Lあたり4.85kcal”をもとに計算)

 

*運動強度の目安

 レクリエーションレベルの水泳(平泳ぎ):5.3METs

 乗馬:5.5METs

 掃除機での掃除:3.3METs

 平地での速歩(5.6km/h):4.3METs

 平地での速歩(6.4km/h):5METs

 

[答え]

1.c,e 2.c,e 3.a,e 4.a,b 5.a,e 6.a,e 7.a,d

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今日はここまで。

最近のCPXに関する問題は9パネルからの出題が主流となり、運動生理学や運動処方に関する知識を有していないと得点につながらない問題が多いです。

また、METs表をもとにどの種類の運動に当たるかを答えさせる問題もあり、普段の臨床での患者指導においてすぐに活かせる知識を求められています。

 

9パネルは初見だとギョッとするかと思いますが、AT pointやRC pointで何がどう変化するかが理解できていれば問題ないかと思います。

 

エネルギー消費の計算問題は、O2の値からカロリー換算ができないと解けません。

O2 1L=4.85kcal は暗記しておいて損はないでしょう。

 

本日もご覧いただきありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。

心臓リハビリテーション指導士の予想問題③:代謝疾患

 どうも。

田舎のPT、イナピーです。

 

本日の内容は、

代謝疾患(糖尿病、脂質異常症メタボリックシンドローム

について。

答えは、一番下に書いてありますのでご参照ください。

  

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[ 代謝疾患(DM, DL, MS)]

1.メタボリックシンドロームの診断基準のうち、誤りのある項目を2つ選べ:

a.LDL>140mg/dl

b.TG≧150mg/dl

c.HDL<40mg/dl

d.空腹時血糖値≧110mg/dl

e .男性の腹囲≧90cm

 

2.次の説明のうち、誤りであるものを2つ選べ:

a.インスリンは肝臓に働きかけ、グリコーゲンの分解を抑制する。

b.メタボリックシンドロームではsmall dense LDLが増加し、LDLコレステロール値に反映される。

c.インスリンは血中のグルコースを骨格筋や脂肪組織へ取り込み、中性脂肪として貯蔵する。

d.インスリンは、血中のグルコースを肝臓へ取り込む働きを促進する。

e .酸化LDLは泡沫細胞の形成に関与する

 

3.代謝疾患における治療薬の説明として、正しいものを2つ選べ:

a.HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)は 肝臓でのコレステロール合成を促進する。

b.スタチンの副作用として、横紋筋融解症がある。

c.スタチンはLDL低値例に対しても適応となるコンセンサスが得られている。

d.エゼチミブは小腸からのコレステロール吸収を促進する。

e .フィブラート系薬は、LPL活性を高め、VLDLの異化作用を促進し、高トリグリセリド血症に対して効果を発揮する。

 

4.糖尿病の治療薬について、副作用で低血糖を生じにくい治療薬として誤ったものを2つ選べ:

a.DPP-4阻害薬

b.スルホニル尿素

c.SGLT2阻害薬

d.ビグアナイド薬

e .グリニド薬

 

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メタボリックシンドロームの診断基準:

 [TG≧150 , HDL<40 , 空腹時血糖値≧110 のうち2つ該当] 

         +

 [腹囲が男性≧85, 女性90cm]         とされる。

 

 *診断基準に "LDLは含まれない" ことに注意

  →病態としてsmall dense LDLが多く、LDL-choに反映されないため。

 

インスリンと肝臓:

 インスリンは肝臓に働きかけ、糖の産生(グリコーゲンの分解)を抑制。

 血中のグルコースを肝臓へ取り込む働きを促進。

 骨格筋や脂肪組織への糖取り込みを促進し、脂肪組織へは中性脂肪として貯蔵する。

 (以下、図を参照)

f:id:t-memo:20190609215200p:plain

 

●糖尿病の治療薬:副作用の低血糖が出現し難い薬剤5種類

 →DPP-4阻害薬:インクレチン分解を抑制し、インスリン分泌促進

  ビグアナイド薬:肝臓での糖分解を抑制し、インスリン抵抗性のみ改善

  SGLT2阻害薬:腎臓での糖再吸収を阻害し、糖排泄を促進

  α - グルコシダーゼ阻害薬:小腸での糖吸収を阻害

  チアゾリジン:肝臓、骨格筋のインスリン抵抗性を改善

 *スルホニル尿素薬(SU薬):血糖低下作用が強く、低血糖を引き起こし易い

 *速攻型インスリン分泌促進薬(グリニド薬):SU薬よりも作用が小さいが、食前に服薬してから食事摂取しないと低血糖を引き起こす可能性がある

 

●高コレステロール症の治療薬:コレステロール合成を阻害する薬剤2種類

 →HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン):メバロン酸の生成を抑制し、肝臓でのコレステロール合成を阻害

 *LDL低値例への適応に関するコンセンサスは一定数報告されているが、未だ確証は得られていない

 *副作用:横紋筋融解症

 →エゼチミブ;小腸でのコレステロール吸収を阻害、約20% LDL-Cを低下させる

 

脂質異常症の治療薬:

 →フィブラート系薬は、中性脂肪を分解するLPL(リポ蛋白リパーゼ)活性を亢進

  VLDLの異化作用を促進し、中性脂肪を減少させる

  中性脂肪の異化作用を促進し、HDL-Cを増加させる

 

【答え】

1.a,e  2.b,c  3.b,e  4.b,e

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今日はここまで。

糖尿病薬については近年特に注目を浴びているので、今年は出題されるのでは

ないかと推察しております。

次回もよろしくお願い致します。

ではでは!

心臓リハビリテーション指導士の予想問題②:循環器疾患の症候・検査編

 どうも。

田舎のPT、イナピーです。

 

今回は心リハ指導士の予想問題第2弾です。

一応、教科書(心臓リハビリテーション必携)の内容に沿って作成しているつもりです。

何か不具合のある問題がありましたら、コメント下さい。

急いで修正します。。。

 

本日の内容は、循環器疾患の症候や検査について。

答えは、一番下に書いてありますのでご参照ください。

 

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1.胸部レントゲン所見で右心不全を評価する項目として正しいものを2つ選べ:

a.右第1弓

b.大動脈弓

c.右心房

d.左心房

e.肺動脈

 

2.胸部レントゲン所見で、心不全増悪を示唆する所見として誤っているものを2つ選べ:

a.CP-angleが鋭角となっている

b.カーリーBラインを認める

c.左第3弓が突出している

d.バタフライシャドウを認める

e.横隔膜が上昇している

 

3.心筋梗塞発症後、心雑音を認める合併症として正しいものを2つ選べ:

a.心室中隔穿孔

b.僧帽弁閉鎖不全

c.心室

d.大動脈弁狭窄症

e.大動脈弁閉鎖不全症

 

4.心筋梗塞患者に対する心エコーで評価できる項目として誤ったものを2つ選べ:

a.壁運動に軽度異常を認めるため、Mモードで左室径を計測した。

b.拡張能を評価するためにBモードで測定した。

c.左室内血栓の有無を評価した。

d.より精確な駆出率を見るためにBモードで測定した。

e.弁逆流の程度を評価するためにパルスドプラを用いて測定した。

 

5.畑作業中に胸部不快感を訴え、来院した80歳男性。心筋SPECT画像の結果から同定される虚血部位として正しい組み合わせを2つ選べ:

Pasted Graphic.png

 

6.身体計測の方法として正しい組み合わせを2つ選べ:

A.転子果長:大転子から内果

B.大腿周径:仰臥位で、膝伸展位

C.胸囲:立位で上肢を前額面上で水平に挙上

D.上腕長:肩峰外側端から橈骨茎状突起まで

E.腹囲:立位で上肢を体側に下垂

 

7.身体機能検査について、正しいものを2つ選べ:

A.等尺性膝伸展筋力:体重比が40%を下回ると、平地歩行が困難となる

B.Timed Up and Go test:20秒以上で階段や外出が困難となる

C.片脚立位保持時間:10秒未満となると、歩行において何らかの介助を要する

D.握力:女性において10kg未満はサルコペニアの診断に含まれる。

E.Functional reach test:15cm未満は転倒の危険性が高い

 

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「循環器疾患の症候・検査」 

● レントゲン所見:

レントゲンから得られる情報として、突出している部位がないか確認。

・右第1弓=上大静脈  右第2弓=右心房

 左第1弓=大動脈弓  左第2弓=肺動脈

 左第3弓=左心房   左第4弓=左心室

⇨それぞれの部位の対応を覚える。

 

・カーリーライン

Kerley`s B line :

⇨鬱血性心不全、リンパ増殖性疾患で(+)

 肺の外側に見られる。肺静脈の鬱血、広義の間質における浮腫を示す。

 

Kerley`s C line:

⇨両側にバタフライシャドウ(+)

 鬱血が間質まで影響してるので網状影

 

・胸水:CP-angleで鋭角が正常。

⇨鈍角になってたら胸水貯留を疑う。

 

・横隔膜高さ:両側平坦で正常。

上昇してたら、

  「肥満/肝腫大/撮影時に息が吸えていない

    などを疑う。

 

● coronary CT:

⇨非侵襲的プラークの評価ができる。

    石灰化が強い重症不整脈の際には綺麗な画像が得られない弱点がある。

 

● 心筋梗塞後の心雑音:心雑音を認める合併症は、以下の通り。

心室中隔穿孔、乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症、左室破裂

 

● 心エコー

・Bモード:

⇨心臓の形態を二次元で評価。

   弁や心筋の動態をリアルタイムに計測可。

 

・Mモード:

内腔の容積、駆出率などを評価。

    二次元での形態的評価は不可能。

 壁運動異常を有する場合、計測は不正確となる。

 

・modified sympson法:

左室壁運動に異常をきたす場合、Mモードでは左室径の測定は不精確となるため、

比較的精確に測定できるBモード画像を用いるmodified symson法を選択する。

 

・カラードプラ:

⇨血流情報をカラーで二次元表示し、逆流や

    短絡血流を評価。

    近づくと赤、遠ざかると青く描出される。

 

・パルスドプラ:

距離分解能があり、深さの同定が可。

    拡張能(左室流入血流速度波形、僧帽弁輪部速度波形)を評価。

 早い流速の測定は困難。

 

・連続波ドプラ:

早い血流、圧較差の測定が可。

    距離分解能がなく、測定位置の同定は不可。

 

・パワードプラ:

血管径,血流量,血球量によりパワーが変化。

    細くて流速の遅い部位の測定に最適。

    単色のため血流方向は評価困難

 

● 心筋SPECT画像(心筋シンチグラフィー)からの虚血部位の同定:

f:id:t-memo:20190604211658p:plain

 →集積低下領域が障害領域を示す

 

● 身体計測:四肢長や周径の計測の基準を確認(詳細はp183表9、図37を参照!)

⇨転子果長:大転子から外果

    大腿周径:仰臥位で、膝伸展位

 胸囲:立位で上肢を体側に下垂

 上腕長:肩峰外側端から上腕骨外側上顆

 腹囲:立位で上肢を体側に下垂

 

● パフォーマンステスト:

握力:

  ⇨女性<18kg、男性<26kgサルコペニア基準に該当

等尺性膝伸展筋力:

  ⇨体重比が40%を下回ると、平地歩行が困難  

片脚立位テスト:

  ⇨5秒未満は転倒リスク大

Functional Reachテスト:

  ⇨15cm未満では階段や外出が困難

Timed up and go test:

  ⇨30秒以上で、階段や外出が困難

 

【答え】

1. a,c 2. a,e 3. a,b 4. a,b 5. a,b 6. b,e 7. a,e

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -  

 

今日はここまで。

画像所見については、毎年数問出題される範囲かと思います。

心不全所見、解離所見など普段の臨床で見かけるものはしっかり復習して対策して

おきましょう。

 

また見ていただけたら幸いです。

ではでは!

心臓リハビリテーション指導士の予想問題①:解剖生理学、身体所見

どうも、田舎のPTイナピーです。

 

 

もうすぐ夏です、7月には大阪で心臓リハビリテーション学会が開催されますね。

今年受験予定の方も多いんじゃないでしょうか。

自身も恥ずかしながら資格を有しておりませんので、今年受験予定なのです。

 

ところが、いざ勉強しようと思ってネットを調べても、予想問題などが見つかりませんでした。

なので、今回自分用に作ってみようと思い、作ったものシェアしようと思います。

時間もあまり残されていないので、過去問題や昨年度出題されていた問題の中から要点だけ抽出していこうと思います。

内容に漏れ等あるかとは思いますが、ご容赦ください。

 

本日の内容は、解剖生理学、身体所見について。

答えは、一番下に書いてあります

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

1.Type1繊維の特徴について誤ったものを2つ選べ

a. 遅筋繊維

b. 酸化能が高い

c. 解糖能が高い

d. 疲労しにくい

e. ミトコンドリア容積が小さい

 

2.骨格筋における、加齢による生理学的変化として誤ったものを2つ選べ

a. 解糖系酵素活性が上昇する

b. 解糖系酵素活性が低下する

c. Type2の筋萎縮が進行し、Type1の割合が増加する

d. Type1の筋萎縮が進行し、Type2の割合が増加する

e. ミトコンドリア容積が減少する

 

3.心筋酸素需要を規定する因子として誤ったものを2つ選べ

a .心房内圧

b .心拍数

c .収縮期血圧

d .拡張期血圧

e .心室内圧

 

4.心筋酸素消費量を推測する二重積を求めるのに用いられる因子として正しいものを2つ選べ

a.SpO2

b.心拍数

c.拡張期血圧

d.収縮期血圧

e.左室収縮末期径

 

5.運動時の動静脈酸素格差を規定する因子として正しいものを2つ選べ

a.酸素摂取能

b.血流分布

c.PaO2

d.心拍数

e.血圧

 

6.心疾患患者において推奨される運動様式について正しいものを2つ選べ

a.血圧が上昇しにくい筋活動は等張性収縮である

b.5kgのダンベルを持ち上げたまま10秒間静止した。

c.息を止め、スクワットを繰り返した。

d.呼吸を止めずに、5kgのダンベル持ち上げたまま10秒間静止した。

e.血圧が上昇しやすい筋活動は等尺性収縮である。

 

7.触知可能な動脈として正しいものを2つ選べ

a.大腿動脈

b.前脛骨動脈

c.足背動脈

d.外腸骨動脈

e.総腸骨動脈

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -  

[解剖生理、身体所見]

●筋繊維:

Type1:赤筋遅筋、酸化能高く疲労しにくい

Type2:白筋速筋、解糖能高く疲労しやすい

 

●加齢による生理学的変化について

Type1の萎縮が進行し、Type2の割合が増加し、ミトコンドリア容量が減少する。

 

●心筋酸素需要量の規定因子と二重積:

心拍数、心筋収縮性、心室壁張力(容積と内圧)の4つで規定される。

二重積は運動中の心筋酸素消費量を予測する指標として用いられる。

その時に用いられる指標として正しいものは、心拍数と収縮期血圧(心室内圧)であり、2つの積で表される。

 

●FIckの式:

この方程式は心拍出量や酸素摂取量を推定するのに用いられる原理。

「流れに加えられる、または除かれるものの量とその前後の濃度を知れば、流量がわかる。」

「心拍出量(Q)=流量(酸素摂取量:VO2)/濃度差(動静脈酸素格差:C(a-v)O2) 」あるいは、「VO2=Q × C(a-v)O2」   で表される。

C(a-v)O2は、運動筋における酸素摂取能血流分布に依存する。

動脈血中の酸素含有量は大きく変化しないため、C(a-v)O2変動にはあまり貢献しない。

 

●静的運動と動的運動:

血圧上げにくいのは動的運動(等張性)

血圧上がりやすいのは静的運動(等尺性)

 

●下肢の検脈可能な動脈:

大腿動脈、膝窩動脈、後脛骨動脈、足背動脈の4つ。

 

【答え】

1.c,e  2.b,c  3.a,d  4.b,d  5.a,b  6.a,e  7.a,c

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 

 

今日はここまで。

残り2ヶ月を切ってます、効率的に一緒に頑張りましょう!

ありがとうございました。

CPXから考える運動処方の概念:③High to Severe-intensity Exercise

 どうも。

田舎のPT、イナピーです。

久しぶりの投稿となってしまいましたが、今日は4つのドメインのうち、

高強度以上の負荷に当たる

「High to Severe-Intensity Exercise」について話します。

 

 

・High to Severe intensity exercise:このドメインは、

Critical Point(CP)を超え、VO2の定常状態が得られずに最大負荷へ至るすべての強度を指します。

 

この強度での運動処方は、心臓リハビリに従事している人たちには臨床でお目にかかることのない強度かもしれませんね。

この時のVO2動態の特徴は、VO2 slow component(SC)の影響を受けて

実際の負荷が反映されず、最大値に到達するまで上昇します。

下図を見ると、CPまでのVO2の傾きは定常ですが、

 

CP以降はそのバランスが崩れてpeakVO2に向かって

急峻に増加していくのが分かります。

 

f:id:t-memo:20190526184210p:plain

運動中のエネルギー代謝においてもかなりの負荷がかかるので、ここでの血中の酸塩基平衡(pH)は大きく酸性に傾き、疲労困憊となって運動が終了するまで血中乳酸濃度が上昇し続けます。

運動処方するとしたら、運動中にはVO2の定常状態が得られないので、

インターバル形式での有酸素運動が推奨されます。

 

もし、このドメインでの持久性運動をするなら、3分-20分程の継続しかできないことが予想されます。

f:id:t-memo:20190601155556p:plain

どの強度もCPを超えており、すぐにpHは酸性に傾いて筋疲労により運動を中止することになります。

 

前回の中等度強度での持久的な運動での話では、VO2 slow componentによりVO2の

上昇は遅延し、予測していたVO2の値に至る頃には相当以上の負荷がかかってしまう話があったと思いますが、今回はとりわけその傾向が強く、%peakVO2を用いた運動処方は困難です。

 

今日もありがとうございました。

ではでは。

 

【参考文献】

www.ncbi.nlm.nih.gov